NHK的自虐史観 に基づく捏造虚報情宣を法的に咎める手段が無い為、過酷な植民地支配で苦しめられたという虚構ファンタジーの登場人物として描かれた台湾住民の遺族が、慰謝料を請求する形で提訴した。
 最高裁は、控訴審の損害賠償命令を破棄し、被上告人の控訴を棄却した。理由として、「過酷な植民地支配の状況」を放送しても遺族の名誉は毀損されない旨、判示した(当該状況が史実に沿うものだったか否かを検証することなく)。

平成28年1月21日
最高裁判所第一小法廷判決 平成26年(受)第547号 損害賠償請求事件 破棄自判
〖概要〗
 日本放送協会Y(被告、被控訴人、上告人)は、平成21年4月5日に台湾に対する日本の植民地統治を批判的に扱うテレビ番組(以下、「本件番組」という。)を放送した。本件番組でYは、明治43年にロンドンで行われた日英博覧会において、台湾に居住するパイワン族の人々を日本が見せ物としたこと、及びそのうちの一人の娘であるX(原告、控訴人、被上告人、その他の原告も多数存在するが、本解説では省略する。)がそれについて「かなしい」と述べていることを取り上げた。
 このとき、Yはパイワン族の人々の日英博覧会での写真の映像を流した際に、その下部に「人間動物園」と表示したほか、この日本の行動は、当時の西欧列強が「人間動物園」と称して行った植民地の人々を見せ物にすることの真似だと説明する学者の見解を取り上げた。ただしこの「人間動物園」という表現は、博覧会当時存在していたものではなく、後世の一部の研究者により提唱されたに過ぎないものであった。また、Yの担当者はXに対する取材時にこの表現を本件番組で用いることを知らせなかった。
 Xは、Yが本件番組においてXの発言を恣意的に編集したことにより人格権を侵害された、本件番組の「人間動物園」という表現によりXの名誉が毀損されたことなどを主張して、Yに対して不法行為による損害賠償を請求した。
 第一審(東京地判平24・12・14判時2216号61頁)は、Xによる人格権侵害や名誉毀損の主張をすべて否定して、Xの請求を棄却した。
 これに対し原審(東京高判平25・11・28判時2216号52頁)は、「人間動物園」という表現を用いた本件番組がXの名誉を侵害するものだと判断した。さらに原審は、「放送事業者が取材対象者の名誉に係る事項等について放送しようとするときは、取材対象者の真意に基づく同意がなければ免責されない」としたうえで、Yの担当者による事前の説明が不十分でありXの真意に基づく同意があったと認められないとして、YのXに対する不法行為の成立を認めた。Yより上告。
〖判決の要旨:破棄自判→請求棄却〗
 テレビジョン放送がされた番組の内容が人の社会的評価を低下させるか否かについては、一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準として判断すべきである(最高裁平成14年(受)第846号同15年10月16日第一小法廷判決・民集57巻9号1075頁参照)。
 本件番組を視聴した一般の視聴者においては、日本が、約100年前である明治43年、台湾統治の成果を世界に示す目的で、西欧列強が野蛮で劣った植民地の人間を文明化させていると宣伝するために行っていた『人間動物園』と呼ばれる見せ物をまねて、Xの父親を含むパイワン族を日英博覧会に連れて行き、その暮らしぶりを展示するという差別的な取扱いをしたという事実を摘示するものと理解するのが通常であるといえる。本件番組が摘示したこのような事実により、一般の視聴者が、Xの父親が動物園の動物と同じように扱われるべき者であり、その娘であるX自身も同様に扱われるべき者であると受け止めるとは考え難く、したがって本件番組の放送によりXの社会的評価が低下するとはいえない。そうすると、本件番組は、Xの名誉を毀損するものではないというべきである。そして、前記事実関係によれば、本件番組によりXの名誉感情等が侵害されたことを理由とする不法行為が成立するともいえない。
NHKスペシャル「JAPANデビュー」控訴審、原告勝訴
2013年12月11日 台湾新聞
 日本の台湾統治を検証したNHKの番組
 NHKスペシャルシリーズ 「JAPANデビュー」初回放送「アジアの“一等国”」( 総合2009年4月5日21:00~22:15)。ちなみに、同番組の制作統括は河野伸洋氏、ディレクターは濱崎憲一氏、島田雄介氏だった。一審では島田ディレクターが被告側証人。
 台湾新聞9月29日記事(「「JAPANデビュー」二審判決前に弁護士が講演~日本李登輝友の会第11回台湾セミナー」
 問題の番組は、2009年4月放送のNHKスペシャル。日本政府が1910年、ロンドンの日英博覧会で台湾の原住民族を「人間動物園」と称して見せ物にしたとの内容で、女性は見せ物にされた男性の娘として紹介された。原告側は控訴審で計710万円を請求していた。
で名誉を傷つけられたとして、出演した台湾人ら42人が損害賠償を求めた控訴審で、東京高裁は11月28日、原告側敗訴の一審判決を取り消し、NHKに対し、パイワン族の出演者・高許月妹さんに百万円の支払いを命ずる判決を下した。視聴者等への損害賠償については棄却されたものの、その心情は理解できるとした。
 昨年12月の東京地裁判決はNHK側の責任を否定したが、高裁判決は「『人間動物園』は深刻な人種差別的表現。番組の趣旨を知っていれば女性が取材に応じたとは考えられない」としてNHKの責任を認めた。
 なお、判決について、原告の弁護士(原告団長:髙池克彦弁護士)は「公共放送によるずさんな取材が認定された。判決はかなり強い調子で糾弾しており、画期的だ」とコメントした。NHKは「判決内容を検討して今後の対応を決める」としている。
 判決文の一部は以下の通り。
 「以上によれば、控訴人の父親が日英博覧会の「人間動物園」で見世物として展示されたとする本件番組を被控訴人が放送したことは、控訴人の社会的評価を低下させ、その名誉を侵害するものとして、不法行為を構成するというべきである。本件番組は、日本の台湾統治が台湾の人々に深い傷を残したと放送しているが、本件番組こそ、その配慮のない取材や編集等によって、台湾の人たちや特に高士村の人たち、そして、79歳と高齢、無口だった父親を誇りに思っている控訴人の心に、深い傷を残したものというべきであり、これに上記認定のとおり、本件番組の内容や影響の大きさ等の一切の事情を斟酌すると、控訴人の被った精神的苦痛を感謝するには、百万円をもって相当というべきである」。
NHKによる高許月妹さんへの名誉棄損を認めない不当判決を下した最高裁
2016年1月21日 HayakawaTomohisa
自社番組の勝訴を伝えるNHKニュース
 1月21日午後3時、平成21年(2009年)6月25日の提訴から約6年半を経て、NHK「JAPANデビュー」裁判における最高裁判所の判決が下された。
 この裁判は、日本の台湾統治を扱ったNHKの番組「NHKスペシャル シリーズ JAPANデビュー 第一回 アジアの“一等国”」が名誉毀損に当たるとして、番組に出演した台湾原住民(パイワン族)の高許月妹さんがNHKに損害賠償を求めた訴訟の上告審。
 最高裁第一小法廷の大谷直人裁判長は「放送によって原告の社会的評価が低下したとはいえない」として、NHKに約百万円の支払いを命じた二審の東京高裁判決を破棄し、高許月妹さんの請求を棄却、NHKの勝訴となった。
 午後2時前から最高裁の南門には傍聴券を求めて67名が並び、抽選に当たった46名が第一小法廷に入った。
 午後3時少し前、報道陣による冒頭撮影のため第一小法廷に大谷直人裁判長をはじめ、櫻井瀧子、山浦善樹、池上政幸、小池裕の5人の裁判官が入廷。2分間の撮影が終わると、大谷裁判長が主文を読み上げた。主文は3行のみので、最高裁に上告したのはNHK(日本放送協会)なので上告人はNHK、被上告人は高許月妹さん。
 <原判決中上告人敗訴部分を破棄する。
 前項の部分につき、被上告人の控訴を棄却する。
 控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。>
 東京高裁のように、判決を導いた「理由」も述べるのかと思って待っていると、大谷裁判長は主文を読み上げるや「閉廷」を宣言しそくさくと退廷、傍聴席からは即座に「不当判決!…恥知らず!」などの怒号が飛び交い騒然となった。
 先に最高裁が異例の口頭弁論を開いたことで、高許月妹さんを弁護した高池勝彦弁護士を団長とする荒木田修、尾崎幸廣、田中禎人、山口達視の各弁護士はある程度の予想はしていたというが、やはり落胆を隠せない様子だった。
 判決後、近くの全国町村会館で開かれた報告会には約百名が参加し、高池弁護団長などが判決やその理由について解説されたが、会場は憤懣やるかたないという雰囲気に満ち、台湾の人々に合わせる顔がないといった声も聞かれた。
 それにしても、判決文の「理由」をよく読んでみると、「テレビジョン放送がされた番組の内容が人の社会的評価を低下させるか否か」をめぐって「一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方を基準として判断すべきである」とした最高裁が平成14年10月に下した判決に基づいて判決を下したものの、採用したのは番組を制作したNHK側の主張だった。
 しかし、東京地裁に提訴した「日本李登輝友の会」の小田村四郎会長をはじめとする10,355人の原告こそまさに「一般の視聴者」の声であることに疑問の余地はない。それにもかかわらず、「一般の視聴者」の声を取り入れず、番組制作者の声を採用して「第1審判決は正当」と判断したことは整合性に欠け、大きな違和感を覚えざるを得ない。
  この裁判の原告でもあった日本文化チャンネル桜の水島総社長は、判決後、やはり当初からの原告の一人である同会の柚原正敬事務局長をゲストに、緊急番組として「 許すまじ最高裁不当判決 」と題する約30分の番組を収録、判決の問題点や高士神社再建による日台の交流について取り上げ、併せて台湾の総統選挙と立法委員選挙などにも言及した。
すり替え不当判決!…NHK「JAPANデビュー」集団訴訟で最高裁
2016/01/22/Fri 台湾研究フォーラム
 歴史捏造や恣意的編集に満ちたNHKのドキュメンタリー番組、「JAPANデビュー」第一回「アジアの“一等国”」を巡るNHK一万人集団訴訟で最高裁が一月二十一日、きわめて不当な判決を下した。
  私が原告団の一人だから、敗訴に不満で「不当」というのではない。良識ある者なら誰もが納得がいかないほどのインチキ判決だったのだ。
 この件に関し、NHK自身が詳報しているので見てみよう。
…日本による台湾統治を取り上げたNHKの番組を巡り、台湾の女性などが名誉を毀損されたなどとして賠償を求めた裁判で、最高裁判所は、「番組は名誉を傷つけるものではない」として、NHKに賠償を命じた2審の判決を取り消し訴えを退ける判決を言い渡しました。
…この裁判は、NHKが7年前に放送した、戦前から戦中の日本による台湾統治を取り上げたNHKスペシャル「シリーズ・JAPANデビュー第1回アジアの“一等国”」によって、名誉を毀損されたなどとして台湾の女性などが賠償を求めたものです。
…1審は訴えを退けましたが、2審の東京高等裁判所は、「番組では、日本が台湾の先住民族をロンドンの博覧会に出演させたことについて差別的な表現があった」などとしてNHKに対して、博覧会に出演した台湾の男性の娘に百万円を支払うよう命じていました。
 「日本が台湾の先住民族をロンドンの博覧会に出演させた」という番組内のエピソードは、台湾総督府がパイワン族の若者達を博覧会で「人間動物園」として展示したという内容。その若者の一人の娘である高許月妹さんという女性が、今は亡き父がかつて「動物」として展示されたことを初めて知り、その遺影を見せられて「悲しいね」と呟くシーンがあるが、二審ではこれが高許月妹さんへの名誉棄損に当たるとされたのだった。
 なぜなら放送後、高許月妹さんは撮影された際、「人間動物園」の話など聞かされておらず、父の写真を見て「懐かしいね」との意味で「悲しいね」と呟いただけだったことが判明。そうした気持ちを番組が歪めたことなどは不法行為だというわけだ。
  しかし今回、この二審判決が覆されたのだ。
 これについてNHKは次のように報じる。
…21日の判決で最高裁判所第1小法廷の大谷直人裁判長は、「番組を見た視聴者は、かつての事実を伝えたものだと理解するのが通常で、台湾の男性の娘である女性の社会的評価が低下するとは言えず、名誉を傷つけるものではない」として、2審の判決を取り消し訴えを退けました。
 かくして我々は敗れたわけだが、なぜこれが不当判決と呼べるのか。
 判決後に開かれた我が方の報告会で尾崎幸廣弁護士は、こう説明する。
 「『悲しい』と話した高許月妹さんの心を番組が踏みにじったことが問題にされているのに、今日の判決は『高許月妹の父親や高許月妹さん自身は動物として扱うべきだとは、一般視聴者は受け取らない』というもので話のすり替え。愕然としている」

2009年4月5日(日) 午後9時00分~10時13分
シリーズ JAPANデビュー第1回 アジアの“一等国”
  1895(明治28)年、日清戦争に勝利した日本は、台湾を割譲され、初の植民地統治を始める。英のインド統治やフランスのアルジェリア統治にならい、植民地をもつことで“一等国”をめざした日本。1910年、ロンドンで開かれた日英博覧会では、台湾のパイワン族を“展示”し、統治の成功を世界に誇示する。日本は「格差と同化」という矛盾した台湾統治を続け、1930年代後半からは「皇民化運動」で日本文化を強制する。
 半世紀におよぶ統治はどのように変遷していったのか。2万6千冊におよぶ『台湾総督府文書』、近年発見されたフィルム、欧米に埋もれていた文書などを手がかりに近代日本とアジアの関わりの原点を探っていく。
  2009年5月3日(日) 午後9時00分~10時13分
シリーズ JAPANデビュー第2回 天皇と憲法
  日本が近代国家の骨格ともいうべき憲法を初めて定めてから120年。大日本帝国憲法は、プロイセン憲法などを参考に「立憲君主制」を採り、当時の世界からも評価されていた。しかし、19世紀帝国主義から第一次世界大戦を経てうねる時代の流れの中で、日本はその運用を誤り、立憲体制を瓦解させてしまう。一つは、議会を担う政党が党利党略に走って政策や理念を忘れ、軍部の肥大化を助長したことに原因がある。さらには、天皇を絶対視する思想が先鋭化し、統帥権を盾に取った軍部が政治を主導していったことが挙げられる。
 國學院大學には、憲法起草者の法制官僚井上毅(いのうえ・こわし)が残した6000点を超える資料が保存されている。ドイツなど諸外国に残された資料も掘り起こし、どのように大日本帝国憲法が制定されたかを分析。さらに、政党政治の自滅と天皇絶対主義の国体論の激流を、これまで紹介されていない資料によって描き、大日本帝国憲法下の政治体制がどのように崩壊したかを検証していく。番組には、京都大学の山室信一教授、東京大学先端科学技術研究センターの御厨貴教授、評論家の立花隆さん、の3人の論客が出演。
  2009年6月7日(日) 午後9時00分~10時13分
シリーズ JAPANデビュー第3回 通商国家の挫折
  太平洋戦争後、GHQが徹底的に解体した企業があった。明治から大正、昭和にかけ国家と一体となり経済の屋台骨を支えた三井物産である。
 150年前、貧しい島国として世界にデビューした日本は、貿易によって富国強兵の「富国」を実現する戦略を立てる。明治政府が貿易立国の担い手としたのは元徳川幕府騎兵隊長の益田孝が作った三井物産だった。世界に残された最後で最大の市場、中国に打って出た三井物産は、日清日露戦争の時代は綿製品の加工貿易で、重工業の時代には資源の獲得でイギリスやアメリカと熾烈な戦いを繰り広げた。
 世界恐慌後の1933年、日本の綿製品輸出は世界一を達成し、経済大国へとはずみをつけた。しかしまさにその時、世界の貿易は自由貿易から保護貿易へと枠組みが変わってしまう。石油という戦略物資をめぐり英米の国際資本と激突した結果、富の源であった世界市場から閉め出されるに至る。
 貿易を通し世界経済の激流のなかで日本の興亡をみつめ、未来への生存条件を探る。
  2009年6月28日(日) 午後9時00分~10時13分
シリーズ JAPANデビュー第4回 軍事同盟 国家の戦略
  日露戦争で軍事面でも“一等国”に躍り出る日本。それは世界のパワーバランスの中できわどく勝利を得た戦争だった。イギリス、アメリカそしてフランスといった列強が日本とロシアのそれぞれをつぶさに分析し、自国の国益をしたたかに計算していたのである。開戦直前に結ばれた日英同盟などによる技術や情報の提供が、日本軍を利したのは明らかだった。
  しかし、以後日本は自国の力を見誤り、外交的にも戦力面でも情報戦を軽視し、国際協調の機会を失う。日本が地獄を見る太平洋戦争は、「敵を知らず己も知らない」戦いに陥る。「軍事強国」をめざした日本が、なぜ瓦解していったのか。新資料を駆使し、主に国際的な同盟関係を巡る情報戦の面から描いていく。

NHKスペシャル シリーズ 「JAPANデビュー」 (エヌエイチケイスペシャル シリーズ 「ジャパンデビュー」)は、2009年4月から6月にかけて 日本放送協会 (NHK) のテレビ番組『NHKスペシャル』で放送された4回分のシリーズを括る題名で、NHKが自社の取り組む「 プロジェクトJAPAN 」の一環として制作した 日本 ドキュメンタリー 番組である。
 日本が西洋列強に対抗する際に命運を握った「 アジア 」 「 天皇 憲法 」 「 貿易 」 「 軍事 」に世界史上から焦点をあてた 特別番組 として4回が NHK総合 、NHKの海外放送、子会社 NHKグローバルメディアサービス が行う NHKワールドプレミアム を通じて放送された。
 第1回放送をめぐっては、日本と台湾の視聴者や番組出演者を含めた約1万300人(台湾人約150人を含む)による 集団訴訟 が起こされたが、原告側の逆転敗訴で幕を閉じた。
各回の概要
サブタイトル 放送日時( JST ) 内容
1 アジアの“一等国” NHK総合 2009年 4月5日 21:00 - 22:14 日本統治時代の台湾 について
2 天皇と憲法 NHK総合 2009年 5月3日 21:00 - 22:14 大日本帝国憲法 日本国憲法 の成立過程について
3 通商国家の挫折 NHK総合 2009年 6月7日 21:00 - 22:14 貿易によって富を得る戦略を立てたが、
  世界大恐慌 による 保護主義 で挫折するまでの興亡
4 軍事同盟 国家の戦略 NHK総合 2009年 6月28日 21:00 - 22:14 日露戦争 から太平洋戦争までの
  外交交渉 や国際情報を分析
第1回 「アジアの“一等国”」
  日本統治時代の台湾 について。
第2回 「天皇と憲法」
  大日本帝国憲法 日本国憲法 の成立過程について。大まかに3つのパートで構成される。
 第1部 大日本帝国憲法の誕生
 アメリカ合衆国が 1787年 の独立時に 合衆国憲法 を明文化したことはヨーロッパ各国に影響を及ぼし、やがて成文憲法の制定は 近代国家 の証とされるようになった。 1882年 にヨーロッパへ憲法調査に赴いた 伊藤博文 シュタイン と出会って 立憲君主制 の憲法について講義を受けた頃から、大日本帝国憲法が発布された 1889年 (明治22年) 2月11日 までの時期を扱う。テーマの中心となるのは帝国憲法草案の 第1条 第4条
 第2部 政党政治 の自滅
  1890年 - 1932年
 第3部「 国体論 」の暴走
  1912年 - 1946年
第3回 「通商国家の挫折」
 貿易によって富を得る戦略を立てたが、 世界大恐慌 による 保護主義 で挫折するまでの興亡。
第4回 「軍事同盟 国家の戦略」
  日露戦争 から太平洋戦争までの 外交交渉 や国際情報を分析し、歴史学者による解説を交えつつ、同盟とは何かを問う。番組の前半を「第一部 日英同盟 」として1902年から1921年までの出来事を、後半の「第二部 日独伊三国同盟 」で1922年から1945年までの出来事を扱う。
 現在の日本で行われる 戦艦三笠 の記念式典と、日露戦争の頃に日本がイギリスから輸入した 測距儀 を導入部として、日英同盟が締結された1902年へと遡る。そこから日露戦争・ 第一次世界大戦 第二次世界大戦 を経て、日本が敗戦に至るまでの時局を辿る。当時の人々の記録や証言を挟みながら、 Uボート レーダー など当時の最先端の軍事技術をめぐる日本と周辺国の駆け引きを追う。
スタッフ
  制作統括
 第1回: 田辺雅泰 、河野伸洋
 第2回: 林新 、河野伸洋、 若宮敏彦
 第3回: 増田秀樹 河野伸洋
 第4回:林新、河野伸洋
  ディレクター
 第1回: 濱崎憲一 島田雄介
 第2回: 倉迫啓司
 第3回:
 第4回: 宮本康宏 三須田紀子
 音楽:プロジェクトimage
  加古隆 羽毛田丈史 松谷卓
  小松亮太 、古沢巌、 宮本笑里 ゴンチチ
 タイトル映像:西部勲
 語り: 濱中博久 礒野佑子
 声の出演: 81プロデュース
 共同制作: NHKグローバルメディアサービス
 制作・著作:NHK
第1回放送をめぐる騒動・訴訟
  日本の台湾統治 をテーマとして 2009年 (平成21年) 4月5日 に放送された第1回「アジアの“一等国”」をめぐり、放送後「日本統治時代が と一方的に描かれており、内容が偏向している」「日本の台湾統治を批判するため、( 台湾人 の)証言をねじ曲げている」「番組には やらせ や、事実の歪曲・ 捏造 があり、 放送法 に違反している」「台湾の人の心と 日台関係 を傷つけた」「台湾をよく知らない人に 排日 的だと誤解を与える」「NHKに「人間動物園」とおとしめられ、名誉を傷つけられた」などとして、視聴者、地方議員、 自民党 国会議員 産経新聞 週刊新潮 日本文化チャンネル桜 などの 保守 メディア 市民団体 、有識者(産経新聞紙上に掲載された 意見広告 は後述)、更に、番組に出演した 台湾人 パイワン人 を含む)や 台湾 や日本の民間団体など日台双方から抗議や批判が続出した。さらに台湾人を含む8389名が 東京地裁 にNHKを 提訴 。日本文化チャンネル桜は1万人の訴訟委任状を以て提訴した。その後二次提訴がなされ、 原告 には番組に出演したパイワン族も加わり一次提訴と合わせた原告は1万300名以上(後述)。
 一方で129件の視聴者の意見、 日本共産党 山下芳生 、共産党の機関紙 しんぶん赤旗 、市民団体の松田浩と 醍醐聰 らは「台湾人の複雑な感情を描いていた」などと肯定的評価を下した。また政治家が番組批判をすることについて「圧力になりかねない」と批判をする者もいた。
 制作者であるNHKは、NHK経営委員会の小丸成洋委員長が「JAPANデビュー」について経営委員会として取扱うべき重大な疑義があるケースには当たらないとの認識を示し、NHK福地茂雄会長は放送内容に問題はないとの考えを表明している。
NHK内部の声
 『 正論 』に掲載されたNHK現役職員の匿名証言によれば、もともとNHK内部でも同番組への疑問の声が多く、放送直後から各職場で「これ、やばくない」「やりすぎだよ」との声があったという。結果としてNHKが最も力を入れるNHKスペシャルとしては前代未聞の抗議の嵐であり、このNHK職員は外部の有識者や専門家と会う際に「NHKはどうしちゃったの」と何度も聞かれたことも明かした。
批判および問題点の指摘
 番組で証言した柯徳三は、「(NHKには) 八田與一 のことや 後藤新平 のことなどもいろいろ話したのに、そこを全部カットした。同窓会の改まった席で誰かが火ぶたを切って不満を話した部分だけが放映され、あたかもあそこにいた人全員が 反日 的であるかのように宣伝された」と批判。又「あくまでも日本は私のお母さんで、育ててくれた恩義を感じています。あそこに出た皆が怒っているのは、日本が、養子にした台湾を終戦後にポンと捨てて 蔣介石 にやってしまったことです。それに対して、日本からはすまなかったの一言もない。(極論すれば、)恨み言の根底は 戦後 の日本の態度であって、領台時代の差別とかいうことではないのです」とコメントした。また「NHKの背後に 中国共産党 がいる」と感じたと語った。
 また 朝日新聞 の取材によると、柯徳三が日本の台湾への貢献を語った部分はすべてカットされたと発言していることも伝えられた。
  金美齢 は、「“日本は加害者”という 自虐史観 ありき」の偏向番組だと非難。 櫻井よしこ は、「“人間動物園”という言葉を、当時の 日本政府 が使った言葉と錯覚するように使っている。全篇がそうした”歪曲報道”の連続」であると批判した。日本文化チャンネル桜社長でチャンネル桜の番組出演者でもある 水島総 は、タイトルバックを例に挙げこの番組は印象操作や意識操作、さらには禁止されている サブリミナル効果 までが駆使されている悪辣な「ドキュメンタリー」であると論じている。
 NHKは旧 台湾総督府 に保存されていた文書を交えて、柯徳三の父親が小学校を退学させられたことについて放送したが、チャンネル桜によれば、柯はこのことをNHK側から文書を見せられるまで知らなかったし、父や祖父は何も語っていない、と取材時に初めて知ってコメントしたと証言した。水島総はこれを当人が知らない情報をNHK取材陣が提示し、それを証言者自身から出た言葉であるかのように撮影して編集し放送したジャーナリストがしてはならぬ「やらせ」取材で、完全な 放送法 違反であることが発覚したと主張した。
  中村粲 は、欺瞞をつぶさに論証した上で意図的なつまみ喰いと作為的編集があったと主張。 渡部昇一 は、並べ方や切り口により同じ歴史を全く逆に見せることが可能だと指摘、公平・公正であるのかと疑問を呈し内容を検証した上で同番組を占領政策に基づいて行われた占領軍( GHQ )による『 真相はこうだ 』に譬(たと)えた。米占領軍によって直接行われた ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム が中国共産党によって現在間接的に行われているのではないかとも主張した。台湾系評論家の 黄文雄 は、番組に出演した台湾人の証言などを例に挙げ検証、取るに足らない異例をさも全体像であるかのように誘導する手法を駆使した捏造と歪曲の番組であったと批判した。
  西村幸祐 は、JAPANデビューの捏造報道、やらせ取材、 サブリミナル効果 の使用などがあったと主張。また、2005年9月2日から 北京 で開催されたシンポジウムでの中国共産党中央宣伝部の責任者 李長春 の演説「 日本 中国 アジア太平洋 各国を 侵略 した歴史を深く研究し、 日本軍国主義 の残虐行為を明らかにし、 右翼 勢力の歴史をねじ曲げ、侵略を美化するでたらめな論調を暴かなければならない。日本による 植民地 支配に抵抗した台湾人民の戦いの歴史を深く研究し、「台湾独立」と日本軍国主義の歴史的根源を明らかにし、祖国の平和統一を促進しなければならない」および、2009年3月30日に日本の主要メディア幹部を集めて行われた懇談会で李長春が「友好的な」 報道 の要請をしたことを紹介した上で、その演説に見事なまでに追随した制作が同番組だったと主張した。
日英博覧会の表現
 1910年に開催された 日英博覧会 で台湾の 先住民 族・ パイワン族 の生活を紹介した企画を番組内で、「人間動物園」と表現したことについてNHKは、取材協力者の ブランシャール の指摘する 英国 仏国 の考え方を基として野生動物商人 ハーゲンベック の回想録にある 独語 の言葉を訳し、 吉見俊哉 の著書を参考にしたとしている。しかし朝日新聞は、パイワン族が住む村の村長は「先達が海外で我々の文化を広めたことは村の誇りとして語り継がれている」と話し、又そのような感情を番組で紹介されなかったと報じた。産経新聞は「 日本政府 がパイワン族の実演を『人間動物園』と呼んだことはない」(訴状)、「パイワン族に対する人権問題」(出演者)だとして訂正を求める声が挙ったと報じた。
 番組に出演し、「人間動物園」に関連して登場したパイワン族の女性が涙を流しながら話す場面に「悲しいね。この出来事の重さ語りきれない」との字幕が付けられて放送されたが、 朝日新聞 の取材によると、この女性は「涙を流したのは父親を懐かしく思ったから」「説明もなく突然(NHKが)来て、父親の写真を見せられただけ」と証言しており、番組の発言を専門家が翻訳したところ「何と言えばいいか。(父のことは)よく分からない」と語っていると伝えられた。同紙は、NHKの「発言と字幕は違っていない。見せ物になったこともディレクターが説明した」との反論も合わせて伝えた。産経新聞の取材として、番組に出演したパイワン族は「番組を見るまで人間動物園の言葉を全く知らなかった。(放送された)『かなしいね』などと述べた自分のコメントは、人間動物園に対して(かなしいと)述べたものではなく、(取材者から示された写真の)亡父を見て『かなしい』と語ったものだ」と説明した、と伝えた。
下関条約後の台湾
 『産経新聞』は、番組で使用された「 日台戦争 」という用語について、出演した台湾人が「初めて聞く」「思いもよらない言葉だ」と驚いたと報じた。
 1938年(昭和13年)に出版された『東洋歴史大辞典』によれば、当該台湾の戦いのことを「台湾の役」(1874年の 台湾出兵 も台湾の役と表現しており2度目)と表記している。同書によれば 台湾民主国 は20日間で瓦解し宣戦布告もなく 日清戦争 の一環として行われたとしている。また日本の公文書では明治廿七八年役の延長という扱いである。なお日本で一般的な呼称は当時の公文書の表記および台湾平定宣言による 台湾平定 もしくは 台湾征討 である。
 NHK経営委員会の第1095回会議では「日台戦争」について、日本と台湾の戦争という「歴史的事実」がないのなら、あったように内容を放送することは放送法に違反するのではないか、との問いが 小林英明 委員から出された。応じた日向英実理事(放送総局長)は「歴史的な事実」は年代ごとに様変わりするとして、 日華事変 が今日では 日中戦争 と呼ばれていることを例に挙げた。さらに小林委員が「学会で多数説でなく、少数説や異説なら、そう説明するのが正しい放送」だと意見を述べたが、これに日向理事が、一説とは考えていないと答えた。
  日本李登輝友の会 の抗議声明に対する平成21年4月14日付NHKエグゼクティブ・プロデューサー河野伸洋の名による回答では「日本の専門家が1990年代に名付け」たと説明。後日、プロジェクトJAPANの公式サイトに記されたNHKの説明では、用語は「1995年、『日清戦争百年国際シンポジウム』から使われていました」とし、使用されている文献3点を示した。また台湾平定に際して戦闘は苛烈で日本軍の死者が5000人に上ったことに着目している。
 一方、産経新聞や「日本李登輝友の会」は、4000人以上は マラリア による病死であり「戦死」者と言えるのか、また 国立国会図書館 の論文検索でこの用語は見つからず学説と呼べる代物なのか、と指摘する。「日本李登輝友の会」の関係者は、「日台戦争」という用語は 平成 に入って用いられた造語であり、「一部の 大学 教授 が使っているが原典は 戦争 の定義もしておらず、 治安 回復のための掃討戦に過ぎない」と批判した。
改姓名・日本語教育・他
  皇民化 運動の事例として 創氏改名 とともにとりあげられ、改姓には独特の規制があり、役所の昇給の条件であったと紹介された改姓名について、台湾研究フォーラム会長の永山英樹は「1.6%に過ぎず強制でないことは一目瞭然だ」と主張した。
 同番組で「 漢民族 でした」というナレーションとともに紹介された 台湾人 は「私は漢民族ではない」と明言している。
  大高未貴 らは、番組に出演したパイワン族の名前を間違えて放送したことを指摘した。朝日新聞や『 撃論ムック 』「NHKの正体」では正しいとされる名前で報じられている。 中村粲 はこれについて、名前が誤っていても訂正に応じないのであれば、訂正放送条項は死文に等しいではないかと批判した。
 『正論』は、番組の「 学校 新聞 などで 中国語 を禁止とし、 日本語 の使用を強要します」との説明について、戦後、 国民党 が来るまで中国語( 北京語 )は話されておらず、また、日本語が定着したのは多言語社会の台湾で民族間の 共通語 となったからであると指摘する。 台湾独立建国聯盟 主席の 黄昭堂 は、台湾人意識というものは日本統治時代の日本語教育による各種族間の共通語の確立、 通信 交通 経済開発 による 住民 同士の盛んな交流によって形成を容易とし、また 台湾独立運動 の中で近年生じたものであると指摘している。
騒動に対する批判及び肯定的評価
 在台ジャーナリストの 酒井亨 は、パイワン族の出演者を映した場面で漢族風の名前が出ていたことについて、パイワン名を持つはずの住民を漢名で紹介したのだとして番組を批判した。その一点を除けば、批判されているような意図は感じないと述べた。 帝国主義 という他国も含めた背景が説明され日本はむしろ相対化されており、また、台湾人は親日だが批判者のいうそれとは視座が違うだろうと主張した。
  拓殖大学 客員教授の岡田充は、 経済 を中心に 日中関係 の構築を目指す「21世紀中国総研」で「NHK叩きは 台湾総統 馬英九 の対中緊張緩和路線が 国際社会 から高く評価され、かつ日本重視路線を選択したことによって国民党を支持した台湾人を否定した金美齡のような人々とそれと結びつき台湾に単純な親日幻想をいだいる勢力の存在感が薄れてしまい、台湾・国際社会からも孤立し、馬批判ができないことによる代償行為」であると主張し、また台湾においては 与党 野党 支持勢力も反対運動に関心を持っていないことや、 李登輝 政権 時代に タイヤル族 武装蜂起 が台湾人アイデンティティに基づいた 抗日 運動として評価され出したり、 陳水扁 政権時代にも 麻生太郎 が外相時代に 植民地 時代を正当化したことに反発した事実を伝えた上で、日本統治のプラス面を強調する番組が多い中で負の側面をきちんと取り上げたことはむしろバランスがよいと感想を述べた。これについて台湾研究フォーラム会長の永山英樹は、岡田の言う「孤立」があるとすれば、台湾は馬英九政権以前から国際社会から冷淡な扱いをされてきたのであり、以前からあるものとし「問題は我々の「喪失感」ではなくNHKの歴史歪曲」であるとして「残念ながら岡田氏の想像はまったく正しくない」と反論をおこないつつ、なぜJAPANデビューを擁護する人々は中国の代弁者の類や 日本共産党 などの 左翼 の人ばかりなのだろうか、と疑問を呈した。
 日本共産党の 山下芳生 参議院 総務委員会 で「非常によい番組だった。(中略)親日的といわれる台湾の人々の心の奥底にある複雑な思いが伝わった。歴史を直視し、互いに共有し、反省すべきは反省もしてこそ相互理解により深い友好関係が構築できると感じた」と感想を述べた。
  市民団体 「開かれたNHKをめざす全国連絡会」はこの放送に対して疑問を呈した小林委員の発言を非難し、また議連の発足や 訴訟 デモ などによって自主自立の姿勢が損なわれないようにと求める意見書を7月7日NHKに提出。同日、 日本ジャーナリスト会議 も番組批判について「 表現の自由 そのものに対する恫喝と干渉に当る」などと主張した。
  西日本新聞 の笠島は番組批判について「嫌な感じなのは元首相を含む 国会議員 が絡んでいること」などと批判。内容については「「台湾は 親日 的」との固定観念が問い直され、当時の「同化政策」が チベット ウイグル への施策と通じる面もあるように感じられた」などと評した。また神保太郎も同様の主張をしたほか、番組が 政治 的な偏向が理由で 放送法 上の問題を持つのならば、 裁判 や抗議運動という政治運動に積極的に関与しているチャンネル桜も同じく問題だろうと述べた。
抗議発生後にNHKが台湾再訪
  井上和彦 の取材によると、番組のチーフプロデューサーとディレクターが抗議発生後に台湾を再訪しており、番組に出演した台湾人に対しNHKへの抗議の撤回を懇願したことが伝えられた。番組に出演した台湾人によると、ディレクター等は2009年6月22日密かに台湾に渡って出演した台湾人の元を訪れ、「身内が巻添えになる恐れ」もあるため抗議の撤回を哀願、更に「たいへんご迷惑をおかけして申し訳ごさいません」と謝罪してきたが、自身からは「私に謝ってもらってもしょうがない。公でちょっと謝ればそれで事態が収るじゃないか」と諭したところ、「それはできません」と返してきたという。井上はこの台湾人の証言が本当ならばNHKの行為は明らかな「隠蔽工作」ではないかと批判し、同時にNHKにこの件に関して質問をすると「放送後、出演された方々に番組の反響をお伝えし、お会いもしましたが、その他、ご指摘のようなことはありません」と回答したという。
 産経新聞は10月6日附1面でこのNHKによる台湾再訪、抗議者への抗議の取り下げ要請、抗議を不問に付す文書にサインするよう求めていたことをその文書の写真と共に報道した上で、NHK広報局の「台湾の方々からの抗議や疑問には誠意をもって説明、回答し、理解いただくように努めてきた。出演者にお会いし、納得いただいた場合もある。問題を不問に付すような要求や要請を行ったことはない」とのコメントを紹介している。文書には「NHKに対し『抗議と訂正を求める要望書』に署名・捺印(なついん)しましたが、これは私の意見です」「事実関係や用語に関しては、NHKの説明を聞き、納得しました」「私はNHKに対して抗議する気持ちはありません」と書かれていたと伝えている。
 産経新聞はこの問題について、NHKの日向英実放送総局長が10月21日の会見で「放送直後の台湾の方々のリアクションは非常によく、抗議するつもりはないと聞いていた。(後に抗議があり)それまでに聞いていた話を確認したい気持ちでサインをいただいた」と説明した、と報じている。
裁判
第1審
 第1審は3年続いたが、2012年12月14日、 東京地方裁判所 原告 敗訴 判決 を言い渡した。
 それによると「番組の編集はNHKに委ねられており、恣意的な編集はなかった」などとし、原告側の 台湾人 の「NHKに取材を受けたが発言をねじ曲げられ、期待と違う内容が放送された」に対しては「番組内容への期待は法的に保護されない」としたうえ、「祖先を動物扱いされた」とする台湾人の主張に対しては「歴史的事実として紹介しただけで、原告の名誉を傷つけたとはいえない」と判断している。またNHKは公平な放送をする義務があると訴えた視聴者らの主張についても「視聴者ら個人に対する義務は負わない」としており、全面的に原告側の主張は退けられている。
第2審
 第2審では原告のうち42人が 控訴 した。2013年11月28日、 東京高等裁判所 は1審判決を破棄し、NHKに「番組で祖先を動物扱いされた」と主張していた原告女性1名に対して100万円の 損害賠償 を命じる判決を言い渡した。
 判決では、「人間動物園」は「当時は使われておらず、新しく使われ始めた言葉」と指摘。「被控訴人(NHK)がパイワン族の展示は『見世物』で『人間動物園』と同義と主張しているが、日本を代表する見世物である歌舞伎を『人間動物園』と表現することが出来ないことは当たり前である」「『見世物』であったと主張するならば『見世物』と表現すれば良かったものを、それでは平凡すぎて衝撃度が少ないからあえて『人間動物園』としたところに被控訴人の主張の破綻がある。」「一部の学者が唱える言葉に飛びつき、人種差別的な意味合いに配慮せずに番組で何度も言及した」と名誉毀損・民族差別であると批判した。その一方で他の原告の主張については「日本に好意的な台湾の人やパイワン族の人に不快な気持ちを生じさせたと推測できる」としながらも、視聴者らの具体的な権利を侵害したとまではいえないとして控訴を 棄却 した。訴訟の中心人物として活動した 華阿財 は、高裁判決を「不満だが、受け入れる」とコメントした。
上告審
 NHKは判決を不服として上告。2016年1月21日、 最高裁判所 第1 小法廷 はNHKの主張を認める。
 「かつてそういう歴史があったと述べられただけで、原告親族への名誉毀損があったとは認められない」として、原告逆転敗訴で幕を閉じた。
経緯
  2009年 (平成21年)
  4月5日 、「プロジェクトJAPAN」シリーズ「JAPANデビュー」第一回「アジアの“一等国”」放送。
 4月10日、 日本李登輝友の会 がNHKに対してあまりにも実態と懸け離れているとする抗議声明を手交した。また、同会はその後の回答(14日付)に不服として、24日公開討論会の共催をNHKへ要請した。これに対してNHK放送総局長の日向英実は22日の会見で「台湾の人たちが 親日 的であることは当然、十分承知していて、それを前提にして伝えた」「番組の趣旨、文脈がある。全要素を平等に個別の番組で伝えねばならないとなると、クリアに物事を申し上げられない。放送全体の中で考えていただきたい。恣意的に編集することはない」などと説明。公開討論の共催要請に対しては、エグゼクティブ・プロデューサー河野伸洋の名による28日付回答で「私たちは番組内容が偏向していたり、事実関係に間違いがあるとは考えていません。そのため、『番組を検証する』必要はないと判断しており、『公開討論会』の要請には応じかねます」として拒否した。
 4月22日、番組にも出演した蔣松輝と藍昭光が連名で「ご参考まで」という題名のメールをNHKに提出した。メールの内容は「人間動物園」「 日台戦争 」「 漢民族 」「 中国語 」について『別の表現が適切でないか』という趣旨だった(下記「6月9日」参照)。
 4月23日、 自民党 町村派 総会で同番組に対し「台湾は 李登輝 元総統など親日家が多いのに番組は 反日 の部分だけを偏向して報じた」との批判が挙がる。また、 週刊新潮 は4月23日号において『歴史歪曲と「台湾人」も激怒したNHK「超偏向」番組』と題して4ページの特集をトップ記事として掲載した。
 4月28日、日台双方から批判が続出している事態を受け 議員連盟 日本の前途と歴史教育を考える議員の会 」( 中山成彬 会長)が、 日英博覧会 の紹介で 日本人 と台湾 パイワン族 との集合写真に「 人間動物園 」とのキャプションを表記した点や台湾で神社参拝を強制して道教を禁止したとする点など13項目にわたり、資料の有無などの明示を求める質問状をNHKに送付。NHKは5月11日付で回答した。
 NHKには4月末までに2924件の反響(厳しい意見1945件、好評意見129件、その他280件、問い合せ570件)が寄せられ、その多くが「一方的だ」という見解の意見であった。5月にも1420件の反響(厳しい意見981件、好評意見26件、その他217件、問い合せ196件)があった。合わせると第1回への反響は4、5月だけでも4344件に達し、前年度の『NHKスペシャル』の平均件数250件を上回った。
 5月初め、「プロジェクトJAPAN」ディレクター鎌倉英也が、労組や労働闘争の支援団体「レイバーネット日本」で『「JAPANデビュー」のディレクターが語る右翼の圧力の実態 』というタイトルで講演することが「レイバーネット日本」ホームページ上で告知された。その直後、該当ページから「右翼の圧力」に関する記述が削除され、文章が修正された。
 5月12日、NHKの第1094回経営委員会において「アジアの“一等国”」が議題とされた。NHKの 福地茂雄 会長は「番組を3回見ましたが、確かに見る人の見方によっては国辱だというところはあります」と発言した。ただし、福地会長は同時に、「 日本 植民地 政策に軸足を置き、 アジア の一等国を目指していた当時の日本の姿を描こうという制作意図から作った番組ですので、番組の内容はこれでいいのではないかと思います」「軸足を植民地政策に置いたら、こういったことはありうるだろうという感じがしました」と発言し、最終的には問題がないとした。福地会長は同様の見解を明後日の会見でも発している。
 5月14日、NHKの 福地茂雄 会長は定例会見において「あの番組はいいところも随分言っていると思った」「(当時の) 産業 インフラ の芽が今の台湾の産業につながっているという気がしたし、 教育 でも規律正しい子供たちが映っており、一方的とは感じなかった。文献や証言に基づいているし、(取材対象の)発言の“いいとこ取り”もない」として番組に問題はないとの認識を表明した。
 5月16日以降 東京 大阪 名古屋 台北 などで今回の問題でNHKへの抗議活動が行われ、東京で行われた16日の抗議 デモ には約1100名が参加。
 5月17日、 中華民国 の自由時報は、NHKによる 媚中 欺台報道によって 日台関係 を離間するものであると報じる。
 5月18日、この問題に関連して、日本李登輝友の会・日本文化チャンネル桜・『 WiLL 』・台湾研究フォーラム・ 在日台湾同郷会 台湾の声 などは「NHKの大罪」と題する全面 意見広告 を連名で産経新聞に出稿。「私はHさん(NHKディレクター)に言うたんだ。あんた、中共の息がかかっているだろう。(中略)NHKは、 北京 に呼ばれてチヤホヤとされて貢物を持って行ったんだろう。そう言ったんだ」との番組に出演した台湾人の言葉が掲載された。
 5月26日、NHK第1095回経営委員会では、番組中に用いられた「日台戦争」という言葉を巡る論議などがあった。なお、この日の日向理事(放送総局長)の見解は後日行われた参院決算委員会(後述)とは異なる。
 5月30日、東京、大阪などNHK周辺で抗議デモが行われ、放送センターがある 渋谷 のデモには約1100名の参加があった。
 6月9日、NHKエグゼクティブ・プロデューサー河野伸洋は「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」の再質問状(6月4日提出)への回答で、4月22日の蔣松輝と藍昭光のメール「ご参考まで」に言及し、『その後蔣松輝さんとお話をして、こうした表現についてのNHKの考えを理解していただいています』と説明。同時に、柯徳三についても『柯さんがNHKに対して憤っている、という事実はありません。また、NHKは柯徳三さんから抗議を受けていません。今回、「再質問」を受理した後、念のために柯さんに確認したところ、柯さんは「NHKに対して抗議するような気持ちはありません」とおっしゃっています。』と回答した(上記「4月22日」参照)。
 6月11日、自民党有志など約60人が参加した報道内容を検証する「 公共放送のあり方について考える議員の会 」が発足した。
 6月15日、柯徳三から『NHK番組「JAPAN・デビュー」に対する抗議と訂正を求める文書』がNHKに提出された。文書の内容は「人間動物園」、「日台戦争」、「漢民族」、「中国語」について、『以上の四つの点を特に、NHKに対して抗議し、訂正を求めます。』というものだった(上記「4月22日」参照)。
 6月17日、NHKは説明文を番組ウェブサイト上に掲載。番組のテーマと取材・制作姿勢および事実関係と用語に関する説明を行った上で、意図的な編集は行っておらず、インタビュー対象者からの抗議も受けていないなどと説明。日向放送総局長は会見で「見解はこれまでと変らない」と説明した。
 6月19日、日本李登輝友の会はブログで4月22日のメール「ご参考まで」について、「それは台湾人のNHKを慮った婉曲的な表現だった。ストレートに訂正せよという要求はしなかっただけなのだ。なぜなら、柯徳三さんが自筆の署名と印鑑を捺してNHKに郵送した「NHK番組『JAPAN・デビュー』に対する抗議と訂正を求める文書」は、4月22日の「ご参考まで」とほとんど同じだからだ。」として、4月22日の「ご参考まで」は実質的な抗議だったと主張した。
 6月20日、先月につづきデモが開かれ、1000人を超える参加があった。
 6月22日、台湾の民間団体「友愛グループ」は、元メンバーの柯徳三や台湾人出演者の発言の批判的な部分だけを報道したとして抗議と訂正を求める文書をNHK福地会長宛に送付した。同日、NHKのディレクターらが台湾人出演者を訪ねサインを要求した(後述)。
 6月25日、 小田村四郎 中村粲 インターネット などを通じた呼びかけで集まった視聴者および台湾人約150名を含む原告8389名が、NHKの放送内容には事実と異なる偏向、やらせや事実の歪曲・捏造があり、放送法の定める公平な報道に違反し、精神的損害を受けたとして、NHKに対し 原告 一人あたり1万円の 損害賠償 を求める訴えを 東京地方裁判所 に起こした。NHK広報局は「番組の内容には問題がなかったと考えている」としている。裁判史上最大の集団訴訟となったこの提訴についてNHKは、夕方5時のニュースで報じたのみで、夜7時や9時、11時には一切報じられなかった。この裁判では出演した台湾少数民族の パイワン人 らも「 日本政府 がパイワン人の実演を『人間動物園』と呼んだことはない」と訴え、民族の誇りを傷付けられたとして原告として参加することになるなど、原告数は 提訴 後も増え続け、2009年8月11日現在で1万人を突破した。同日、 参議院 総務委員会 において自民党の 世耕弘成 日本共産党 山下芳生 によって番組についての質疑が行われた。
 7月22日、NHKは番組ウェブサイトに「いまだに誤った情報に基づいたご意見やご批判もある」などとして追加の説明文を掲載。この中で、「人間動物園」について「パイワン族の人たち自身がどう受け止め、感じたかということは、「人間動物園」の事実を左右するものではありません」などと主張。パイワン族の方への「やらせ取材」などの取材についても、正当性を主張した。また「台湾・友愛グループ」など台湾の方達から抗議の文章を受取っていたことを明らかにした。
 7月24日、 日本李登輝友の会 などはNHKに対し連名で、番組に出演した台湾人の抗議の事実の有無やディレクター等が訪台した事実の有無、出演者名誤記の認識の有無などの質問及び公開討論会開催を要請する文書を送付。
 8月3日付でNHKは、7月24日付の日本李登輝友の会などの質問と要請に米本信NHK広報局長名で「ご質問への回答は差控えさせていただきます。また「公開討論会」も開くつもりはありません。」と回答した。
 8月12日、台湾のパイワン族子孫が来日し講演。その中で、博覧会について「日英博覧会に参加したことは自分たちの誇りである」「NHKが学者の説を借りてわれわれを『人間動物園』の見せ物だったと放送したことで、パイワン族の尊厳は傷つけられた。厳重に抗議したい」と述べ番組を批判。NHKを相手取った1万人以上の集団訴訟に原告として加わると表明した。
 8月25日、NHK経営委員会の小丸成洋委員長は会見で、経営委員が意見を述べることの是非について「番組に重大な疑義が生じれば、NHK執行部に説明を求めることは出来る。ただ通常は編集の自由を尊重し、個別の番組への干渉は自制しなければならない」と述べた。この番組については「(重大な疑義は)ないと思う」との見解を示した。
 8月28日、NHK訴訟原告団が台湾入りし、パイワン族のクスクス村で現地調査を実施。新たにパイワン族の部落の長24人が訴訟参加を表明した。
 9月16日、朝日新聞は朝刊「Media Times メディアタイムズ」において、独自取材に基づく記事を掲載し、「アジアの”一等国”」問題の経緯や背景を詳しく伝えた。番組への抗議が存在することだけでなくNHK側の反論も紹介したこの記事はネット配信されず、紙面だけの掲載となった。その中でNHKは「誹謗中傷、歪曲ともいえる誤った情報が一部に流布している」などと従来の主張を繰り返した(上記「7月22日」参照)。
 10月6日、産経新聞は朝刊1面で、番組のチーフプロデューサーとディレクターが台湾を再訪し、出演者に抗議の取り下げや番組を不問に付す文書へのサインを求めていたことを報道した(下記「抗議発生後にNHKが台湾再訪」参照)。同日、番組出演者とパイワン族37人を含む約1900人が事実の歪曲があったなどとして約2600万円の賠償を求めて新たに提訴。産経新聞は、来日したパイワン族の原告 華阿財 記者会見 で「なぜ事実にあわないことを発表して世界に伝えるのか。当時、 日本人 はわれわれに敬意を持って接してくれた。民族の自尊心が傷付けられた」と話した、と報じた。1次提訴とあわせた原告は1万300人を超え、請求総額は約1億1千万円となった。NHKは「訴状が届いていないので、申し上げることはありません」とコメントした。
  2012年 (平成24年)
 12月14日、 東京地方裁判所 において 原告 敗訴の判決が下る。原告は、 東京高等裁判所 控訴 した。
  2013年 (平成25年)
 11月28日、 東京高等裁判所 で一審判決を 棄却 しNHKに 損害賠償 を命じる判決が下る。
 12月11日、NHKは二審判決を不服として 最高裁 上告
  2016年 (平成28年)
 1月21日、最高裁第1小法廷(裁判長判事・ 大谷直人 )はNHK側主張を認め、原告請求を棄却。「そういう歴史がかつてあったと述べられただけで、原告親族への名誉毀損があったとは認められない」。【櫻井龍子、大谷直人、山浦善樹、小池裕、池上政幸 】
inserted by FC2 system