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読解問題
文章の内容
 言葉を連ねた文章は、人の考えをまとめる為の道具。
 文章の内容は、次のように分類できる。読解問題に添えられた文章も同じ。
  1. 個人の心
  2. 人間関係
  3. 社会の在り方
  4. 歴史的な文化の推移
  5. 総てを包摂する自然
 読解問題を解くときは、問題の文章が、どの分類に属するかを意識すると、解き易くなる。
文章の種類
①説明文…ある事柄について説明した文章。筆者の主張はない。
②論説文…ある事柄を取り上げ、筆者の考えを述べた文章。筆者の明確な主張がある。
③物語文…ストーリーがある話。作品中の人物や出来事などを通して作者が伝えたいメッセージが描かれている。
④随筆文…筆者自身の体験・見聞とそれについての感想などを自由に書いた文章。論説文に近いものと物語文に近いものがある。物語文に近い随筆文は筆者の体験や見聞とそのときの個人的な感想が中心に書かれている。一方、論説文に近い随筆文は、社会に対する考察なども含まれ、筆者の思想が書かれている。
⑤韻文…詩・短歌・俳句・狂歌・川柳…
⑥その他

説明文(ある事がらや物事について、すじ道を立てて説明した文章)
 筆者が何について、どのように考えているかを正しく読み取る。
  1. 文題に注目する
     「筆者がいちばん伝えたい内容=主張・論旨」を把握する為のヒントが含まれていることが多い。
  2. 段落の要点をまとめる
     段落ごとに要点をまとめ、「起→承→転→結」を意識して、読み取る。
    1. )起:[何]について説明しようとしているのか、説明の対象を述べている
    2. )承:[起]で述べた内容を詳しく説明している
    3. )転:具体的な事例に当てはめてシミュレーションしている
    4. )結:結論を述べている
論説文(あるテーマについて「筆者の主張」を説明した文章)
 筆者が何を主張したいのかを正しく読み取る。
  1. 文題に注目する
     「筆者がいちばん伝えたい内容=主張・論旨」を把握する為のヒントが含まれていることが多い。
  2. 段落の要点をまとめる
     段落ごとに要点をまとめ、「起→承→転→結」を意識して、読み取る。
    1. )起:[何]について説明しようとしているのか、説明の対象を述べている
    2. )承:[起]で述べた内容を詳しく説明している
      1. )自説の根拠を説明している
      2. )反対説を挙げて、その間違いを指摘している
    3. )転:具体的な事例に当てはめてシミュレーションしている
    4. )結:結論を述べている
  3. 逆説・説明・換言の接続詞の後ろの部分に注目する(筆者の主張がまとまっていることが多い)
    ・逆説の接続詞…しかし、けれども、ところが、でも、だが…など
    ・説明の接続詞…だから、なぜなら、というのは…など
    ・換言の接続詞…つまり、要するに、このように、すなわち…など
物語文 (「登場人物の心情」を読み取らせる出題が多い)
 読み取るヒントは、〈原因→心情→言動〉という構造。
〖例1〗
 「メロスは激怒した」という冒頭の一文から、[原因]を推測するのは、受験国語の定石。

 …歩いているうちにメロスは、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当(あた)りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい。のんきなメロスも、だんだん不安になって来た。路(みち)で逢(あ)った若い衆をつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来たときは、夜でも皆が歌をうたって、まちは賑やかであった筈(はず)だが、と質問した。若い衆は、首を振って答えなかった。しばらく歩いて老爺(ろうや)に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。老爺は答えなかった。メロスは両手で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた。老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。
 「王様は、人を殺します。」…

 以上を読めば、メロスが王様の悪逆非道を知って「激怒」したと理解できる。

 …メロスは、単純な男であった。買い物を、背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った。…

 そして、結果としての[言動]で、[心情]を確認することができる。

随筆文(ある出来事に対する「筆者の感想」を述べたもの)
 筆者に影響を与えた出来事(体験)筆者の感想(見解)という構成が多い。
 〔パターン1〕出来事1→出来事2→感想
 〔パターン2〕出来事1→小感想1→出来事2→小感想2→大感想
 上記の構成を意識し、「場面」や「話題」の区切りに着目して、読む。

韻文(詩・短歌・俳句・狂歌・川柳…)
    作詩のテクニック
  1. 比喩
    あるものを別のものにたとえ。具体的にイメージしやすくする効果がある。
    例:蟻が蝶の羽をひいて行くああ ヨットのようだ (「土」三好達治)
  2. 擬人法
    人間ではないものを人間の動作や様子にたとえること。生き生きとした印象を与え、親しみを感じさせる。
    例:冬の木立 しょんぼりと 寒かろう   ~
      (「冬の木立」小川未明)
  3. 名詞止め
    最後の言葉が印象に残りやすくなったり、歯切れがよくなってリズム感が生まれたりする。
    例:~きりきりともみ込むような冬が来た 人にいやがられる冬    ~ (「冬が来た」高村光太郎)
  4. くりかえし
    リズムをつくるとともに、くりかえされる言葉を強調する働きがある。
    例: あかい雲 あかい雲 、西の空の 紅い雲 。   ~ (「あかい雲」小川未明)
  5. 倒置法
    語順の前後を入れかえることで、内容を強調したり、語調をととのえたりする。
    例:「金色の ちいさき鳥の かたちして  いちょうちるなり   夕日のおかに (与謝野晶子)
  6. 対句
    関連のある言葉を使い、似たような言い方で、同じくらいの長さの行をならべ、詩の形を整えたり、リズムをつくったりするもの。
    例: 太郎を眠らせ 太郎の屋根に雪ふりつむ。 次郎を眠らせ 次郎の屋根に雪ふりつむ。 (「雪」三好達治)
  7. 省略法
    文章の一部を省略して、余韻を持たせる。
    例:~此の可愛らしさみよ而も大地を確りと ふみしめて 「歩いている」 などが省略されている) (「歩行」山村暮鳥)
  8. 季語
    旧暦に基づいている。
    春:花、桜、蛙
    夏:若葉、青葉、こいのぼり、五月雨、雨蛙、青蛙、麦秋(ばくしゅう)
    秋:朝顔、天の川、七夕

語彙 (ごい。ある種の言葉の集まり)
 文章の内容把握には[要約]という作業が必要になるが、そのときに役立つのが 語彙 。語彙を増やそう。
  熟語 は、語彙の宝庫。
熟語の9パターン
①上の漢字が下の漢字を修飾しているもの
小川 さい
絵本
など
②「~を」「~に」にあたる意味の漢字が下にくるもの
決心 める)
作文 る)
帰国 る)
など
③似たような意味をもつ漢字を組み合わせたもの
戦争 う= う)

・願望 う= む)
など
④反対や一対の意味をもつ漢字を組み合わせたもの
左右

・強弱 い⇔ い)
など
⑤上の漢字が主語、下の漢字が述語になっているもの
人造 る)
市営 む)
頭痛 い)
など
⑥同じ漢字を重ねたもの
国々

・人々
など
⑦上に「不・無・非・未」などがついて、下の言葉の意味を打ち消すもの
不便 便 利)
無害
非運
未完 成)
など
㊟「不・無・非・未」は、「~ない」という意味。
⑧下に「性・的・化・然」などの意味を強めたりそえたりする漢字がつくもの
悪性 い+
知的 性+
美化 しい+
必然 ず+
など
⑨長い熟語を略したもの
入試 験)

・国連 合)
など
 ㊟普遍・主観・客観・絶対・相対・恣意・逆説・概念・観念・演繹・帰納…図示が難しい熟語も多い。

対義語 (反対や一対の意味をもつ漢字を組み合わせたもの。[ 類義語 ]の対義語)
〖例2〗
〔問題文〕
 現代は、情報過多の時代であると言われている。その反面、個々の情報が客観を装えば装うほど、情報を送り出す送り手の身振り、背後に見え隠れする手つきのようなものへの希求がかえって強まっているのではないだろうか。
 たとえば新聞記事にあって「事実」を「正確」に書くことが理念とされることは言うまでもないが、それが本当に客観的な記述が可能なのかといえば、むしろかぎりなく疑わしい。そもそも「今後~となることが望まれる。」「~が期待される。」「~といえそうだ。」というのは一体誰の判断なのだろうか。一面記事に頻出するこれらの文末表現は客観性と記者個人の判断とのギリギリの折衷の産物にほかならず、実は客観の衣を被ったこうした主観的判断ほど危ういものはないのである。(後略)
〔解き方〕
 「\(x\)を装うほど逆に\(y\)が強くなる」は、\(x\)と\(y\)の対義的な関係を表わす。
 「客観」の対義語は「主観」。
〔要約〕
 情報の送り手が客観を装いながら紛れ込ませた主観を、受け手が求めるのは危ういことだ。

同音異義語 (同じ発音で意味が異なる語)
 「せいかく(正確)」と「せいかく(性格)」、「いし(意志)」と「いし(医師)」、「かき(柿)」と「かき(牡蠣)」、「機械」と「機会」…
〖例3〗
〔問題〕以下の例文中のカタカナを漢字に直しなさい。
①‐A シンシンの作家。
①‐B シンシンともに健康だ。
③‐A カイシンの作だ。
③‐B カイシンして勉強する。
⑤‐A 火のヨウジン。
⑤‐B 政府のヨウジン。
②‐A 小鳥のタイグン。
②‐B 敵国のタイグン。
④‐A 消化キカンの働き。
④‐B 食物がキカンに入る。
⑥‐A 同音語でもイギの場合がある。
⑥‐B イギを申し立てる。
㊟図示省略
〔解答〕
 ①‐A 新進の作家。
 ①‐B心身ともに健康だ。
 ②‐A 小鳥の大群。
 ②‐B 敵国の大軍。
 ③‐A会心の作だ。
 ③‐B改心して勉強する。
 ④‐A 消化器官の働き。
 ④‐B 食物が気管に入る。
 ⑤‐A 火の用心。
 ⑤‐B 政府の要人。
 ⑥‐A 同音語でも意義の場合がある。
 ⑥‐B 異議を申し立てる。
〖例4〗
三つのタイショウ
対称 対照 対象
〈対=二つで一組を作るもの〉+〈称=はかり(てんびん)⇒つりあう〉
 ⇨互いに対応してつりあっていること。シンメトリー
〈対=二つで一組を作るもの〉+〈照=つき合わせて見くらべる、照らし合わせる〉
 ⇨二つのものを照らし合わせて比べること。
 ⇨相違が際立っている二つのものが並ぶこと。コントラスト。
働きかける目標となるもの。めあて。オブジェクト
〔問題文〕
 自分と他人とは違う。自分のことはよくわかるが、他人のことはよくわからない。いま自分が何を考え、何を感じているか、それは手を取るようによくわかる。しかし、いま他人が何を考え、何を感じているか、これは手に取るようにはわからない。この自他の
非対称性 は、誰もが知っている事実である。
〔着眼点〕
「自分のことはよくわかる…いま自分が何を考え、何を感じているか、それは手を取るようによくわかる」

「他人のことはよくわからない…いま他人が何を考え、何を感じているか、これは手に取るようにはわからない」
は、 互いに対応してつりあっているとは言えない=非対称 だという筆者の問題意識

熟語を構成する個々の漢字の意味にこだわる
〖例5〗
〔着眼点〕
  保障の意味は、権利や安全などを守ること。「障害者」という言葉と同じの字が使われている理由は?
〔解釈〕
 「障」は、なりたち[形声]意味を示す阝(山)と、音を示す章(ショウ。さえぎる)を合わせた字。行くてをさえぎる山の意味。攻撃をはばむ山は、攻められる側からすれば、自分たちを守ってくれるもの。
 一方、「障害者」は、行動に制約を負っている者。
 両者に、「さえぎる山の意味」を表わす漢字が使われている意味を理解しよう。
〔注〕
  1. 語彙:ごい。[語]は「言葉や単語」、[彙」は「同類のものの集まり」→語彙の意味は「同じ種類の言葉や単語の集まりを表わす概念」
  2. 熟語:じゅくご。二つ以上の漢字が結びついて一つの言葉になったもの
  3. 同音異義語:どうおんいぎご。発音が同じで意味の異なる語
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