11月5日午前1時半頃。まだ多くの人々が行き交う東京・新宿の歌舞伎町。路上に寝転んでいる黒いスーツの男性の頭を鷲掴みにする白い服の女。次の瞬間、女は腕を振り下ろし、こう叫んだ。
 「オラァ! ふざけんなぁ! ボケ!」
  警視庁は11月5日、20代の女を殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。
 社会部記者が語る。
 「逮捕された女には新宿区歌舞伎町2丁目の路上で同じく20代の男性をカッターナイフで刺した容疑が持たれています。男性は肩付近を刺され出血。命に別状はないようですが、全治10日間の怪我を負いました。男性はホストと見られ、逮捕された女はその客という情報がある」
 歌舞伎町ホスト関係者が語る。
  「刺された男性は23歳。いわゆる"モブホスト(ランキングにも入らない、役職もないホストのこと)"で歌舞伎町では無名の存在です。刺した女は男性より年上。『男のせいで半年間、入院生活を送った』『(このホストに)半年で1800万円を貢いだ』『人生を壊されそうになって許せなくて刺した』と語っているそうです。ホストと客との揉め事はそこそこありますが、ここまで大きなトラブルになるとは……」
 深夜の歌舞伎町で発生した殺人未遂事件。現場で何が起きていたのか。
 「週刊文春」は事件発生当時の動画を複数入手した。そこには、騒乱の一部始終が収められていた。
 路上に寝転んでいる黒いスーツの男性が被害者だ。白いパーカーに白いパンツの女が男性の頭部を掴んで引き摺り回している。そして何かを持った右手を男性の首元に振り下ろした。
 「ふざけんなぁ!」
  男性の頭部を掴んで引き摺り回す女
 その直後、女は周囲の人に引き離された。男性はうずくまりながらも自分のスマホで誰かに電話をかけている。
 「この時に女性が手にしていたのが、カッターナイフでした」(前出・歌舞伎町ホスト関係者)
 男性はかなり出血しているため、スーツの下に着ている服は真っ赤に染まっている。居合わせた女性が心臓マッサージを施しているが、男性はぐったりとしたままだ。
  通報を受け、すぐに警察が駆けつけた。
 刺した女は、腕組みをして仁王立ちしたまま、倒れている被害者男性を見下ろしている。まだ怒りが収まらないのか、男性をこう怒鳴りつけた。
 「クソガキよ! お前、人のことぶっ壊してな! 舐めてんなよ、コラァ!」
 慌てて警察官が間に入る。
 「あなたがやった? あなたが刺したの?」
 女は「ホストなん、こいつ!」と言い、倒れている男性を指差した。
 警察官は「今回はどういう状況だったの?」と事情聴取を始めた。
  倒れている男性と事情聴取を受ける女(手前、「TOKYO Live Camera TV」より)
 また別の動画には、そこからしばらく経った後の様子も収められていた。
 救急隊に囲まれる男性はぐったりとしたままだ。しかし、先ほどまでは激昂していた刺した女は一転、人目も憚らず、嗚咽している。警察官の数は先ほどよりも増えている。行き交う人と野次馬で周辺は騒然としている。
 その後、女は警察の取り調べ中に急に倒れたという。そして、そのまま連行されていった。
  前出の社会部記者が語る。
 「連行された女は殺人未遂の容疑で緊急逮捕されました。警察の調べに対し、女は容疑を認めています。2人の間には何らかのトラブルがあったようで、何があったのか、慎重に捜査を進めています」
 11月5日午前1時半に東京・新宿の歌舞伎町で発生した殺人未遂事件。警察が殺人未遂容疑で現行犯逮捕したのは、その場にいたA子(25)だった。
 首元をカッターナイフで刺され、その場に倒れていたのはホスト店勤務のBさん(23)だ。
 「Bはホスト店で内勤として働いているが、いわゆるプレイヤー(接客の仕事を行うホスト)ではない」(歌舞伎町ホスト関係者)
  血まみれでうずくまるBさんの前で、狂乱状態に陥ったA子はこう叫んでいた。
 「オラァ! ふざけんなぁ! ボケ!」「クソガキよ! お前、人のことぶっ壊してな! 舐めてんなよ、コラァ!」
 その場でBさんの傷の手当てをしたという20代のホストが振り返る。
 
 「被害者は面識はないのですが、僕とは別のホスト店で働いている方です。事件があった時は、『(歌舞伎町の)道が分からない』という後輩を案内するために現場周辺を歩いていたんです。すると、人が倒れており、女の子1人が血を止めようと傷口を押さえていた。その周りを囲むように20人くらいの人だかりができていたんですが、みんな助けず撮影をしており、異様な光景でした。僕はすぐに駆け寄りました」
  Bさんの意識はあったものの、ショック状態だったという。この男性は車の教習所で教わった救護処置を施し、警察が来るまでの約40分間、「大丈夫ですか」と声をかけ続けたという。
 「刺された箇所は中の筋肉が見えるほど深く切られていた。(Bさんの)身体はすごく震えていて過呼吸気味でした。瞬きを一度もせずに目が開きっぱなしで、このままでは危ないと思った。刺したと思われる女はまだその場にいたので、『逃げないでくださいね』と言うと『私はその男と違って逃げたり隠れたりしない!』と言い放っていた」(同前)
  事情聴取を受けるA子(白い服の女性、「TOKYO Live Camera TV」より)
 深夜の繁華街で起こった殺人未遂事件。A子とBさんの間で一体何があったのか。歌舞伎町という場所柄に加え、Bさんがホストクラブ勤務ということから、SNS上では「ホストと客の色恋トラブルがきっかけではないか」という見方が強い。
 だが、「週刊文春」が取材を進めると、少し異なる状況が浮かび上がってきた。
 
 逮捕されたA子は1998年、長崎県生まれ。上京したのは約5年前である。東京に拠点を置き、港区と新宿区の繁華街を行き来する生活を送っていたという。A子の友人女性が打ち明ける。
  「実はA子は今回刺したBと一時期、同棲していたんです」
 A子が後に“泥沼”に引き摺り込まれていくきっかけとなったのは、あるアプリだった。
 「『toU』という、ホストが勧誘目的でよく使っているイケメン特化型ライブ配信アプリがあるんですが、A子はそれでBと知り合い、交際し始めました。Bはホスト店勤務ですが、A子とは客の関係ではありません。A子はBと付き合って、生活が一変してしまった。服から美容代まで全てを支払う“ヒモ”になってしまったのです」
 そして、「A子はBからのDVに悩まされていた」とこの友人女性は証言する。
 
 「BからのDV被害は壮絶でした。今年4月には肋骨を骨折させられ、顔面を8針縫う大怪我を負わされていました。さらに6月と8月に受けたDVでは、尿管と膀胱を損傷しており、入院もしています。本当に身体中がアザだらけでした。そして、A子は大量の睡眠薬を摂取するようになった。オーバードーズになり、精神はどんどん崩壊していきました」
  「週刊文春」は、DVを受けたA子の写真を複数入手。そこには、目を逸らしたくなるような惨たらしい傷跡が収められていた。
  こうした状況の中、A子は自身の姉やこの女性など複数の友人にBさんについて相談している。しかし、結局、Bさんとは別れられなかった。
 「A子はBと共依存状態になってしまっていた。別れては戻ってを何度も繰り返していたのです。あれだけDVを受けていたのに、2人で(アプリの)配信をするなど、異常な状況が続いていました。A子は警察にもDVを相談し、Bには接近禁止命令が出てました。自宅周辺に警察のパトロールを依頼して『会いたくない』とこぼしていたんですが、また連絡して会っちゃう……そういうことを繰り返していた」(同前)
 そして、事件が起きる約1週間前の10月30日、A子は別の友人女性に泣きながら電話をかけてきたという。A子は電話をしながら、Bさんのライブ配信を見ていた。
 「ありえないから。マジで。普通に許せないから……」
 「週刊文春」はこの時の電話のやり取りの音声を入手。必死に宥めようとする友人女性に対し、A子は泣きながら、怒りを露わにしている。
 
 「舐めてるやん完全に。こんなにボコボコにされて、2ヶ月入院してたんだよ。4月からさ、ずっと病院生活で。半年病院生活なのに、おかしくない? 半年間も入院生活して、ぶっ壊されて。本当にもう無理。ここまでやられたら、壊れる、マジで」
  この男のDVで自分は苦しい思いをしているのに、なぜこの男はのうのうとライブ配信をしているのか…A子はBさんへの憎悪の念を増幅させていく。そして、“復讐“を匂わせるような物騒な台詞を言い放ったのだった。
 「なんでこいつ普通に生きてんの。なんでこいつ普通に私があげたもの着て、あげたものをつけてさ、美容代も全部出してさ。全部花持たせてさ。ふざけんなよ、マジで。うざいんだけど、マジで……」
 そして、11月5日深夜、A子は歌舞伎町の路上でBさんの急所をめがけてカッターナイフを振り下ろしたのだった。
 
 ここに複数枚の写真がある。真っ赤な血糊で染まった白いTシャツ。特徴的な二重瞼の男性は笑みを浮かべている。背景に写っているのは点滴や医療関係者のものと思しきニトリル手袋。どうやら病院で“自撮り”をした写真らしい。
 この写真が回ってきたという女性が呆れつつ明かす。
 「搬送先の病院で“自撮り”した写真と、刺された箇所をアップにした計4枚の写真を友人らに送っているみたいです。ピンピンしていますが、刺された直後にこんなことを普通しますかね」
 写真に写っている男性は、11月5日午前1時半頃に新宿・歌舞伎町で発生した殺人未遂事件の“被害者”Bさん(23)である。
  歌舞伎町で起こった殺人未遂事件が大きな反響を呼んでいる。
 ホスト店勤務のBさんの首元をカッターナイフで刺したとして駆けつけた警察に殺人未遂の容疑で現行犯逮捕されたのは、都内在住のA子(25)。
 
 センセーショナルな事件はSNS上で一気に拡散し、“ニセ被害者”まで登場する始末だった。
  “ニセ被害者”の投稿(現在は削除済み)
 「『お客様と揉めてしまい、刺されたのは自分です』という旨の投稿をしたホストがいますが、あれは偽者。『ホストと客間で起きた色恋トラブルではないか』という見立てに便乗しただけの輩です。そもそもBはホスト店で働いているものの、プレイヤー(接客の仕事をするホスト)ではなく内勤スタッフですから」(歌舞伎町ホスト関係者)
 これまで「週刊文春」は2度にわたって事件の詳細を報じてきた。逮捕されたA子とBさんは「toU」というイケメン特化型ライブ配信アプリをきっかけに交際したこと。A子はBさんから壮絶なDV被害を受けていたこと。A子は犯行前、友人に電話で「普通に許せないから」などと“復讐”を予告するような発言をしていたこと……。
  公衆の面前での殺人未遂に手を染めるまでA子を追い詰めたBさんとは一体、何者なのか。
 実はBさんは内勤スタッフになる前、かつては「プレイヤーホスト」でもあった。その時代を知る、新宿で飲食店を営む男性が語る。
 「Bは周囲からは“サイコパス”と評されていました。言ってることがいつも支離滅裂ですごく変わった子という印象です。人と目を見て話せないので、ホストとしては致命傷なんです。もちろん売り上げも立てれず、“モブホスト(ランキングにも入らない、役職もないホストのこと)”と呼ばれていましたね。以前働いていた店の人もBに手を焼いており、内勤に退くしかなかったと聞いています」
  その後のBさんは流れゆくままに歌舞伎町の生活に身を委ねた。そして2022年12月、A子と出会う。2人が共依存の関係に陥り、BさんがA子に壮絶なDVをしていたことは既に報じた通りである。
 そんなBさんの行状を「許せない」と憤る人物がいる。A子の実姉だ。DVを受けている最中、A子はこの姉に相談をしていたという。
 姉本人が打ち明ける。
 「妹から交際相手に過度な暴力を受けていると聞かされていました。私は何度か警察署に相談に行ったのですが、妹とBは強い共依存状態にあるからと取り合ってもらえなかったんです。今年の4月と6月には『休まないと死んでしまう』と医師から言われるほどの怪我を負わされて、それから妹は入院を繰り返していた。でも、Bからの暴力はなくなるどころかエスカレートしていきました」
  同年8月9日、A子はBさんから身体を数十カ所殴打されたことで緊急搬送された。この時の診断書には〈四肢・体幹打撲〉〈尿管損傷の疑い〉〈膀胱損傷の疑い〉〈顔面打撲〉〈第3棘突起骨折〉と記されている。
 この様子を見た姉はすぐにA子のもとに駆けつけたという。
  「このままだと妹がBに殺されるか、妹がBを殺すかのどっちかになってしまうと思い、警察署に向かいました。そして、8月17日にBが逮捕されましたが、不起訴となり約20日で釈放。その後、接近禁止命令が出されました。ところが、Bはその2日後に妹にSNSで連絡を取っていたのです。結局、離れることができなかった……」
 BさんによるA子への“アプローチ”はそれだけではなかった。
 SNSでの連絡の他にも、BさんはA子の自宅玄関のドアノブ部分に〈今でも大好きです。ごめんね〉〈結婚して家族になりたかった〉などと書いた手紙と一緒に〈キャラメル、トトロ、キノコ、ジェシー〉と呼ぶ“思い出のぬいぐるみ”を掛けた。「週刊文春」はこの手紙の写真を入手。そこには〈本当の赤ちゃんいたら良かったな〉などとも綴られていた。
  あの手この手を繰り出すBさんによって、A子の感情は複雑に絡み合っていくばかりだった。
 A子の姉が語る。
 「この時も妹から『助けて』と連絡がきたので、すぐに警察へ通報したのですが……。その矢先に今回の事件が起きてしまった」
 事件当日の夜、A子はBさんに向かって「クソガキよ! お前、人のことぶっ壊してな! 舐めてんなよ、コラァ!」などと罵詈雑言を浴びせていた。ところが…。
  Bさんの友人女性が、事件直前の2人の様子を証言する。
 「実はあの日、BはA子とデートをしていたんです。B本人から聞いていました。事件の数時間前には、一緒にお風呂に入るための入浴剤を買うために2人で薬局に行ったとも話していた。その後、A子が『焼肉食べたい』と言い出して、焼肉屋に向かう途中で刺されたとBは言っていました。また、Bは『今日(取材日=11月6日)から(ホスト店に)出勤もする』と、あっけらかんとしていました」
  “共依存”関係にあったA子とBさんは負のスパイラルに堕ちていく。そしてA子は殺人未遂という容疑で逮捕されてしまった。
 その後、Bさんが血まみれの“自撮り写真”を友人に送りつけていたことは冒頭に記した通り。だが、それで終わらなかった。
 A子の友人が打ち明ける。
 「Bは事件当日、退院した後、『toU』でライブ配信を行っていました。それだけでも信じられなかったのですが、背景をよく見ると、驚くべきことに、そこは逮捕されたA子の自宅だったのです」
  Bさんが配信した「toU」の生放送
 「切られたのは俺だよ」
 11月5日午後8時30分頃、嬉しそうな笑顔で自慢げに語る二重瞼が特徴的な若い男性。イケメン特化型ライブ配信アプリ「toU」で生配信をやっているようだ。この男性はホスト店に勤務するBさん(23)。遡ること約19時間前、Bさんは新宿・歌舞伎町の路上で交際相手のA子(25)にカッターナイフで首元を刺され、倒れていた。そして、この配信が行われている場所は……。
  Bさんが配信した「toU」の生放送
 11月5日午前1時半頃に発生した歌舞伎町ホスト殺人未遂事件。「週刊文春」はこれまで3回にわたって、この事件の内幕を詳報してきた。
 殺人未遂で現行犯逮捕されたA子と“被害者”Bさんはアプリで知り合ったこと。2人は共依存関係に陥り、BさんはA子に壮絶なDVをしていたこと。そして今年8月にはBさんはA子へのDVで逮捕されていたこと……。
 2人の歪んだ恋愛関係の行き着く果ては、女の逮捕という悲劇だった。
  逮捕されたA子(本人インスタグラムより)
 しかし、事件はそれで終わらなかった。冒頭の通り、A子の凶行から約19時間が経過した11月5日午後8時30分頃、“被害者”であるはずのBさんは、“加害者”で逮捕されたA子の自宅に1人でいた。そして、「toU」でライブ配信をしていたのである。
 Bさんの配信を見たA子の友人が語る。
 「私はA子の家に行ったことがあるのでわかります。間違いなくBはA子の家から配信していました。おそらく鍵を持っているので自由に出入りできるのでしょう。あんな事件があって、自らは怪我をしている。さらに“家主”のA子は殺人未遂事件で逮捕された。にもかかわらず、ヘラヘラとライブができる神経が全くわかりません」
 その後、日付が変わって11月6日深夜1時頃。Bさんの姿は再び歌舞伎町にあった。殺人未遂事件から丸1日が経過しようとしていた。
  Bさんは、歌舞伎町のホストらがアフターで使っているバー「X」を訪れた。
 居合わせた客が振り返る。
 「Bは女性2人を引き連れて入店してきました。終始笑顔で、バーのオーナーや周りの客に『全国デビューしちゃった』と事件のことを話していた。お酒も飲んで、ご飯もほおばるように食べていたので、元気なら良かったなと思いましたよ。でも、あまりにも嬉しそうに傷を見せびらかしているので、心配していた人や手当てをした人が浮かばれなく、私はあまり良い気はしなかったですね」
   “目立ちたがり”のBさんは、店内中に聞こえる声で話を続ける。
 「Bの話によると、刺された時に電話をしていた相手は勤務する店の店長。『休みます』と連絡していたみたいです。首を刺された状況で凄いですよね……。Bは国際医療研究センターに搬送され、1リットルの輸血を受けた後、朝6時には病院を出れたと話していました」(同前)
 Bさんは「最後に失恋の歌を歌って帰る」と、ホストのラスト・ソングの定番、赤西仁の「ムラサキ」を歌い上げて店を後にしたという。
 「週刊文春」の記者は、Bさんが「X」にいるとの情報を受け、すぐに現地に向かった。そして、今回の事件の経緯やA子との関係、壮絶なDVなどの事実確認をするべく、同日午前5時15分頃、「X」を出てきたところを直撃した。
  …事件について詳しく話を聞かせてほしい。
 「なんとも思ってないですよ、別に。隠すつもりもないですし。あ、刺されたで終わり。正直、刺されたけど飲みに来て、普通に歩いているわけじゃないですか。で、なんもないじゃないですか。……だけっす」
 …直前にトラブルがあったのか。
 「そんなことない。ドラッグストアで買い物して、焼肉いこって言われて」
  …その途中ではぐれてしまい、合流したら刺されたと。
 「そうそう。(A子が)ちょっとなんか怒って、家行くか、ホテル行くか話して歩こうと思ったらいなくなって、どこ行ったと思ったら電話が来て『コンビニにいる』って」
 …A子は何に怒っていたのか。
 「何に怒ったのかわからなくて。急に不機嫌になって。なんだこれはってなって。例えば、その日喧嘩してたとかならわかるんですけど」
 …今年、複数回にわたってA子に暴力を振るったか。
 「何それ。そんなことやったら、普通に一緒にいないじゃないですか」
  …8月にはDVで逮捕されたと聞いている。
 「逮捕されたら、なんで今ここにいるんですか?(笑) 普通に殴られました。顔を縫いました。逮捕されました。ここにいます?」
 …A子が入院したことはあるか。
 「体調不良で入院じゃないですけど、病院にはいったことありますよ。血液検査は健康診断みたいなので受けてたことはありますよ。何を見ているか分からないですけど」
 …「toU」の配信、A子の自宅からだったが。
 「何それ。今日配信したのはさすがに俺の家ですね。別に隠すとかじゃないし」
  逮捕されたBさんが釈放後にA子に送っていたメッセージ
 …2人の関係は恋人?
 「そうですね。向こうの家にいくこともありますし、向こうが俺の家に来ることもありますね」
 …(A子に対して)怒りや憤りはあるか。
 「めんどくせぇなっていうのはありますけど、警察にもいかないといけないですし、本当だったら入院もしないといけなかったですし。それだったらさっさと忘れた方がいいのかなぁって。あの(テレビなどで報じられている)動画とかの中であいつのやったことで本当のことって(自分を)刺したことぐらいじゃないですか。テレビとかでは殴り合いをしていたとかいってましたけど。殴り合いをしてたら、刺されないよって(思う)」
  そしてBさんはA子との関係について「普通にカップル」と強調する一方で、最後はおどけるようにこう話すのだった。
 「結婚もしてないですし、変な話、殺人未遂だから最低2年は会わないからどうでも良いや」
 そしてBさんは、明るくなり始めた朝の新宿の雑踏に消えていった。
 歪んだ恋愛関係の成れの果ては、A子が殺人未遂容疑で逮捕されるという悲劇だった。共依存関係に陥り、周囲を巻き込む事件を起こしたカップルに未来はあるのだろうか。

パパ活詐欺「頂き女子りりちゃん」のマニュアルに書かれた“お金を頂くための魔法の言葉” 「おぢ」から2億円搾取した悪質手口
  「りりちゃん」こと渡辺真衣被告(本人YouTubeより)
 今年8月、「パパ活」で男性から金銭を騙し取る方法をまとめた「マニュアル」を販売したなどとして詐欺幇助容疑などで逮捕された渡辺真衣被告(25)。11月2日に初公判が開かれたことで金の流れや動機に注目が集まり、一躍ワイドショーを賑わせている。彼女が犯罪に手を染めた背景には何があったのか。歌舞伎町に詳しいライターの佐々木チワワ氏がリポートする。
 「頂き女子りりちゃん」こと渡辺被告が、複数の男性から総額2億円以上を騙し取った疑いで逮捕された事件。
 10月に入ると、渡辺被告から約4000万円を受け取ったとして、ホストの「狼谷歩」こと田中裕志容疑者(26)が逮捕された。罪状は「組織犯罪処罰法違反」という意外なもの。
 田中容疑者は渡辺被告にLINEで「俺も共犯、真衣ちゃんが捕まる時は俺も一緒」という主旨のメッセージを送っており、これが「共犯関係」だとみなされ、逮捕の決め手になったという。
 今回の逮捕の知らせを受けた歌舞伎町のホストと“ホス狂い”の女性は、戦々恐々。というのも「頂き女子」はここ数年、ホストクラブに通うメインの客層だからだ。
 まずは事件の概要を振り返りたい。一連の騒動の発端は今年5月、男性2人から約1000万円を騙し取った名古屋の女子大生の逮捕だった。彼女は渡辺被告が作成・販売していた「頂き女子マニュアル」の購入者だったため、8月に詐欺幇助容疑で渡辺被告が逮捕されたのだ。その後、9月には2700万円、10月には5200万円をそれぞれ50代男性から騙し取った疑いで、渡辺被告自身も詐欺容疑で再逮捕。総額2億円以上を荒稼ぎしていた。
 自ら“頂き女子”なるキャッチーな名前を付けた渡辺被告は、マニュアルを販売した理由を「担当ホストにたくさん貢ぎたかったから」と話す。詐取したお金はほとんど残っておらず、指名している「担当ホスト」にほぼ全額を注ぎ込んだと見られている。
 彼女が販売していたマニュアル内では、自身が勤務していた風俗店やキャバクラ、出会い系などで出会った「おぢ」こと「寂しそうな男性」に、「お金を頂くための魔法の言葉」をかけることで、大金を貢がせることができると明かす。「魔法の言葉」リストには、「お腹減ったなあ、夜ご飯何食べようかな」という日常会話から「借金があって、このままだと身体を売らないといけない」というお金をねだる“交渉術”まで、具体的に紹介されている。
 渡辺被告は出演したYouTubeチャンネルで、頂き女子になった経緯をこう語っていた。
 「担当(ホスト)に『エース(ホストの客の中で一番お金を使う人のこと)になってほしい』って言われて風俗を始めた。けれど途中で性病に罹り、ホストに払えなくなったお金について風俗で出会った男性にLINEをしたら、振り込んでくれた」
 これが渡辺被告の成功体験となったのだろう。
  渡辺真衣被告が販売していた「マニュアル」の一部
 渡辺被告が巨額の金を落とした「ホストクラブ」といえば、かつて有閑マダムや社会的に成功した金持ちの女性が、年下の男性と遊ぶために訪れる──そんなイメージだった。だが、現在のメインターゲットは20代女性だ。彼女たちのなかには月に100万円以上も使う“太客”も少なくない。
 背景にあるのが、10年代後半から拡大した「パパ活」である。店に一部を取られる風俗嬢に比べて、ダイレクトに金銭を受け取れるパパ活は、女性を買う男性がSNSを使いこなすようになってから爆発的に増加した。「若ければ若いほどお金を稼げる」という構造をホスト側も容赦なく利用し、彼女たちに積極的にパパ活をするよう促している。
 そこで渡辺被告が生み出したのが、「頂き女子」というパパ活を“正当化”する新しい言葉だったのだろう。
 渡辺被告は「魔法」という名の嘘を駆使して大金を稼ぐ様子を、SNSで「計5000万以上頂いてるおぢとのLINE」などと喜々として発信していた。その影響は大きく、昨今、歌舞伎町には彼女のやり方を真似る“りりちゃん信者”が増加している。
 15歳から歌舞伎町に通っていた筆者が理解できてしまうのは、嘘をついてお金を「頂く」過程には、実に麻薬的なスリルがあることだ。そして稼いだ大金をホストクラブに湯水のように注ぎ込み、派手なシャンパンコールを浴びる。まさに“刺激中毒”である。
 こうした事件が起きるたびにホストクラブとホスト側の悪質さがクローズアップされる。社会がこの悪魔的な刺激から若い女性をどう守るか、改めて考えないといけない。
  「頂き女子」のカリスマだった(本人Twitterより)
  YouTubeもやっていた

  「風俗嬢」としてYouTubeも
  「おぢに言われたら嫌な言葉」
  土下座する画像もアップ
  「催涙スプレーをぶっかけられたときのわたし」
  「キス顔配信」をTwitterで宣伝していた
  ホストにも足繁く通っていた
  「頂き女子」を提唱
  Twitter等でもよく配信していた
  social-plugins
  twitter



公明党の重鎮都議と“ソープのドン”の怪しい関係 風俗店の団体から複数回の献金が
国内 政治 2023年07月14日
 うなぎと梅干といえば、食い合わせが悪いとされる代表例である。だが、以下で紹介する公明党東京都議団の重鎮と「ソープランドのドン」という組み合わせほど、ミスマッチなものもないのではあるまいか。
【写真】“ソープのドン”との関係が指摘されている長橋桂一都議
 東京・豊島区選出の長橋桂一都議(66)は現在、公明党東京都本部副代表で、公明党東京都議団においてまさに重責を担う存在だ。
 その長橋都議が“意外な団体”から献金を受けていると明かすのは、さる都政関係者である。
 「長橋都議は東京防犯健全協力会(以下、東健協)から、毎年、パーティー券を購入してもらっています。東健協は、基本的に池袋・新宿・渋谷エリアを中心としたソープランド店の多くが加盟する任意団体。長橋都議はそこの会長と、昵懇じっこんの間柄なのです」
 東健協関係者に聞くと、まず、
 「東健協の加盟店には保健所による検査対象店と検査日時等が書かれた“一覧表”が配られます。保健所に捜査権限がないといっても、突然立ち入り検査をされると、なにかと差し障りがある。その表は、われわれには大変ありがたい代物なんです」
 と言い、続けて、
 「こんなふうに東健協が保健所から協力を得られるようになったのも、長橋都議の父親、長橋孝元都議が東健協と保健所の関係構築に尽力してくれたから。そういう恩があるので、東健協の代表は今でも息子を大切にしているわけです」
 では、齢79歳にして“ソープのドン”とも呼称される東健協会長・高橋俊夫氏ご本人は何と語るのか。
 「僕がこの業界に入ったのは、20歳そこそこ。巣鴨のソープランドでボーイをやっていたんだけど、その頃から、長橋のオヤジのことは知っていた。オヤジはいつも自転車に乗って選挙区を駆け回っていてね。顔見知りになったんだよ」
 高橋氏が30代の頃に東健協の前身のような組合で会長職に就任した際には、
 「どうやって組合を運営していけばいいのか、オヤジに相談したもんです。オヤジの助言で、加盟店に募金箱を設置するようにもなりました」
 ならば息子との関係は?
 「2代目の桂一は、ざっくばらんなオヤジと違って堅物すぎる。僕らとは話ができない。オヤジとの縁があるから、あくまで個人では応援していますけどね。堅物すぎて、はっきり言えば、全然使えないよ」
 と笑いながら、政治献金についても、
 「公明党のパー券って安いじゃない。私が買っているのは年に1、2回、金額も1回1万円程度でしょう」
 意に介さないふうなのだ。
 一方、長橋都議は、
 「2015年に個人名で1口、19年に団体(注・東健協)名で6口、20年に団体名で2口、22年に団体名で3口、以上計4回、高橋氏にパーティー券を購入してもらった」
 と回答。つまり、高橋氏は個人・団体両方を通じて、長橋都議に援助していたことになるが、支持母体・創価学会のご婦人たちは、どういう受け止め方をするか。
 ジャーナリストの乙骨正生氏が言う。
 「風俗の業界団体から利益供与があったことが明るみに出れば、女性部(旧婦人部)が黙っていないはず。集票マシーンである彼女たちの信頼を失えば、議席を維持するのは難しくなる」
長橋桂一都議のFacebookより
他の写真
週刊新潮 2023年7月13日号掲載
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